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スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説

日本が抱える慢性的な課題として、少子高齢化や人口減少が続いている状況です。これに伴い働き手の減少や高齢者による運転ミスなど、将来発生するであろうトラブルが予測されます。そして今、この課題を解決するのために「スマートシティ」というまちづくりの取り組みが注目されはじめたのをご存じでしょうか。

この記事では、スマートシティの概要や導入状況の他、必要な技術について解説しています。現在どのような取り組みが進行しているのか理解するために、国内外の事例についても触れているので、ぜひ参考にしてください。

スマートシティとは?国土交通省による定義

スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説01

近年流行した新型コロナウイルスのまん延が発端となり、IoT技術、AI技術の活用が加速しています。その中で、市民の生活や都市活動の効率化を図る目的として新たな技術・システムを活用したまちづくり「スマートシティ」と呼ばれる取り組みが注目されています。

このキーワードは2020年に開催された「統合イノベーション戦略2020」で話題にのぼり、広く知られるようになりました。この取り組みが現実になれば、日本の抱える次のような慢性的な課題を解決できるといわれています。

  • 少子高齢化
  • 災害多発(ゲリラ豪雨、地震)
  • 感染症リスク
  • 緊縮財政

上記に挙げた課題は現状を維持し続けるだけでは、今後さらに深刻化するものと予想されています。スマートシティはSDGsの達成や仮想空間と現実空間を融合させる取り組みであるSociety5.0の推進にも、効果を発揮すると期待されています。

参照:内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省「スマートシティガイドブック」

スマートシティとスーパーシティの違い

スマートシティと似た言葉に「スーパーシティ」があります。どちらも同じようなまちづくりの取り組みだと感じてしまいがちですが、実際はどのような違いがあるのでしょうか。

スマートシティはデジタル技術やAI技術といった新たな技術やシステムを活用し、住民およびまち全体の機能効率化を行います。一方、スーパーシティは住民ニーズにあわせた課題解決や住環境整備など住民に特化した取り組みを行います。

また、スーパーシティは都市部を対象とするスマートシティとは目的が違い、主に地方創生事業の一環として、地方部を対象に取り組んでいます。似た言葉ではありますが、全くの別物です。

スマートシティの種類

スマートシティには、合計6つのフレームワークが設けられているのをご存じでしょうか。

  • 生活
  • 環境
  • 経済活動
  • 教育
  • 交通
  • 行政

このフレームワークはウィーン工科大学が提供したものであり、一部を分かりやすくアレンジしたものです。

スマートシティは、私たちの生活を豊かにすることを最終的な目的に据えています。社会生活における利便性を高めるための仕組み作りが多く、上記に挙げたどれかひとつでも効率化できれば、他の項目も引き上げられていくのが特徴です。

複雑に絡み合う関係性で成り立つ6つのフレームワークは、スマートシティを進行するために欠かせない要素だといえます。

スマートシティのフェーズ

スマートシティには、2つのフェーズ(局面)があります。

  • ver1.0:技術中心かつ事業者主導
  • ver2.0:住民のためにデジタル技術活用

この2つのフェーズは全く別視点から考えられているものであり、現在ではver2.0が主流です。
デジタル技術の発展はもちろん、ユーザーニーズの変化など様々な要因が関係し、技術だけを見ていたver1.0では住民を巻き込んだまちづくりが行えませんでした。

しかし、ver2.0で住民を巻き込んだまちづくりができれば、自然とデジタル技術活用を浸透できると考え導入が進んでいます。

スマートシティが注目される背景

スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説02

なぜ今スマートシティが話題を呼んでいるのでしょうか。この理由は、日本が都市集中型社会へ移行していることが関係しています。

1955年から実施されている総務省が「都市部への人口集中、大都市等の増加について」の総人口の調査をみると、東京圏、名古屋圏、大阪圏といった三大都市圏は、毎年のように人口が増加している状況です。

一方、その他の地方については人口の割合が減少傾向にあり、1995年で地方圏で62.8%だったのが、現在で48.2%と約2割弱の人口が都市圏に移動していることが分かります。

この流れは今後も加速し、さらなる人口問題を生んでいくと予想されます。そのことも関係し大都市での生活でも住民が豊かな生活を送れるように、スマートシティの考えが取り入れられるようになったのです。

参照:総務省「都市部への人口集中、大都市等の増加について」

スマートシティで私達の生活はどう変わる?

スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説03

スマートシティの取り組みが現実になったとき、私たちの生活はどのように変化するのでしょうか。ここでは、2つの項目に分けて、スマートシティが実現した後に得られる魅力を紹介します。

生活の質が向上する

スマートシティが実現すると、私たちの生活品質を向上させる魅力があります。次の生活課題を解決し、快適かつ効率的な生活が送れるようになるのです。

  • 自動運転車両の充実化により人力での運転による事故を防止できる
  • リモート環境が充実し、学校や会社、公共機関への移動の手間を削減できる
  • 食材・料理のオンライン注文が充実し、買い物の手間を削減できる

中には、着々と浸透し始めているサービスもあります。今後さらなる技術発展により、これらの生活が当たり前になる日が近いかもしれません。

活動の自由度が増し、コミュニケーションが活性化される

人間活動の中で「移動」に関する手間は、早急な解決が求められる課題です。とくに都市部では交通機関の乗り換えに苦労したり、遠方に出るほど移動費がかかったりすることがネックポイントになっています。

スマートシティの導入では「MaaS」と呼ばれる移動を一元管理するシステムや「ライドシェア」と呼ばれる相乗りで移動の手間や利用料金を抑えるシステムが進行しています。

移動の簡易化および交通費のコストダウンが成功すれば、出かける機会が自然と増えていくでしょう。その結果、活動の自由度が増し、コミュニケーションの活性化につながることが期待されています。

スマートシティの現状

スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説04

スマートシティへの進行は私たちに豊かな生活を与えてくれるようになりますが、現状はどのくらい実現できているのでしょうか。

現在の日本は、スマートシティの実現に向かい出す取り組みが始まったばかりです。2019年に開催された「統合イノベーション戦略2019」で取り組みの方向性が決定し、都心部を中心にスマートシティ化が開始しました。

この取り組みを加速させるために国及び企業、住民で連携し「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を発足しています。

日本の首都である東京のスマートシティは世界順位84位(2021年時点)と、先進国の中では遅れをとっています。なかでもテクノロジー分野の普及が平均以下の評価であることから、今後さらに加速させる必要があるでしょう。

スマートシティを実現する5つの技術

スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説05

国内で着実に進行しているスマートシティには、まちづくり分野で様々な最新の技術・システムが活用されています。

その中でも、5つの技術に注目が集まっているのをご存じでしょうか。スマートシティをより深く理解するため、それぞれの特徴を紹介していきます。

センシング技術

センシング技術とは、人やモノの計測・判別に利用するセンサーを活用した技術のことです。

センシングでは、自動車や建物、防犯設備、インフラ施設など様々な場所で利用されているセンサーとインターネットをつなぐIoT技術を導入します。

収集した情報は統計データの収集や防災計画、市場分析などのインフラ・ビジネス分野で活用できます。

また、建物の老朽化のチェックなど、まちの安全性向上を目的としても導入が進められています。

通信ネットワーク技術

通信ネットワーク技術とは、インターネットを活用した技術のことです。近年の高度化したネットワークを使って人力では処理しきれないビッグデータを収集・分析し、まちづくりの予測・計画などに活用されています。

中でも一般ユーザーの使用率が高いSNS等を活用して災害時の緊急情報を発信するなど、利便性や安全性の向上に一役買っています。

データ技術

データ技術とは収集したデータを目的に応じて振り分け、新たなまちづくりの活路を見出していく技術のことです。例えば、危険性が高い場所の発見や災害対策などに活用しています。

データ技術は課題の抽出を行い複数の目的に応じて振り分けし、最後に解決策を導きだすために利用します。

データ技術はセンシング技術や通信ネットワーク技術による情報収集など様々な機能が絡み合い、相乗的に効果を発揮するのも魅力的なポイントです。

可視化技術

可視化技術とは数字や記号の羅列であるネットワークデータを、人の目に見える形に変える技術のことです。

例えば、VRやARといった仮想空間には、可視化技術が使われています。他にも、収集したデータのグラフ化や図表化するときに欠かせない技術であり、人間の処理・認識能力を手助けしてくれます。

AI技術

AI技術とは機械学習や深層学習ができるソフトウェアを使い、人間のような振る舞いを再現する技術のことです。

AI技術を活用すると、従来必要だった人間の作業を大幅に削減し自動化できます。前項で登場した自動運転車両にも、AI技術が利用されています。

国内のスマートシティ取り組み事例

スマートシティとは?実現に必要な技術や国内外の事例について解説06

スマートシティの概要が把握できたところで、ここでは現在実施されている国内の取り組みについて3つの事例を紹介していきます。

事例1:(神奈川県横浜市)横浜スマートシティプロジェクト

神奈川県横浜市では次に示す性能をもつエネルギー循環都市を目指すために「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」が進められています。

  • 防災性
  • 環境性
  • 経済性

このプロジェクトでは太陽光パネルや電気自動車、HEMSなど環境に優しい気エネルギーの生産・消費で成り立つ仕組みが導入されました。

横浜市と電機メーカー、建設企業が連携し、毎年のように取り組みの状況と今後の計画について意見交換が行われています。

事例2:(福島県会津若松市)スマートシティ会津若松

島原健会津若松市では産業振興に重きをおいて、住民の健やかな生活とまち全体の見える化を図るために「スマートシティ会津若松」を進めています。

具体的には、下記のようなサービスを実施し、利用者が便利だと感じるだけでなく地域全体が活性化するスマートシティの実現を目指します。

  • 観光業にDXを取り入れる
  • 位置情報を活用したデジタル防災
  • 電子カルテによる円滑な医療環境の提供

事例3:(東京都港区)Smart City Takeshiba

東京都港区では、国家戦略特区に指定されている竹芝エリアで「Smart City Takeshiba」を進行しています。

このプロジェクトではソフトバンクと東急不動産がタッグを組み、スマートシティ化の構想に取り組んでいるのが特徴です。各社が開発したIoT技術やロボティクス技術を取り入れ、次世代型の面白いまちづくりを進めています。

海外のスマートシティ取り組み事例

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国内で取り組まれているスマートシティ化に対し、海外ではどのようなスマートシティ化の取り組みが行われているのでしょうか。続いては3つの国で実施中の取り組みについて、分かりやすく解説していきます。

事例1:(アメリカ・シカゴ)Array of Things

  
アメリカのシカゴでは、センシング技術を活用した「Array of Things(AoT)」と呼ばれる取り組みを進めています。

シカゴ市内にある街灯にセンサーモジュールを設置し、各地の交通量や環境情報、インフラの情報収集を行っているところが特徴です。

地域全体の情報を集めることでまちづくりの方向性が決定でき、住みよいまちづくりを目指しています。

事例2:(ポルトガル・リスボン)リスボン・インテリジェント・マネジメント・プラットフォーム

ヨーロッパにあるポルトガルのリスボンではセンシング技術やAI技術、可視化技術などを幅広く利用して「リスボン・インテリジェント・マネジメント・プラットフォーム」と呼ばれる取り組みを実施しています。

市内のごみ箱やカメラに設置されたセンサーから情報を取得し、ゴミ収集作業のリソース管理をしています。

AI技術によりゴミ箱の状況を管理しているので、ビジネスの効率化に貢献しています。これらの情報は市民向けのアプリケーションにも反映されており、交通情報や混雑状況など市民の生活に欠かせない情報を最新技術を駆使して提供しています。

事例3:(中国・杭州)ET都市ブレイン

中国の杭州では交通渋滞や違反、事故を改善するため、アリババと協力して「ETシティブレイン計画」というAI技術を活用した取り組みを進めています。

緊急時の信号の切り替えや渋滞時の交通制御など交通状況を可視化することで、円滑な車両移動を実現しています。

スマートシティ化における3つの課題

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世の中を便利にしてくれるスマートシティですが、まだ課題が残っているのが現状です。最後に、スマートシティが抱える課題についてご紹介します。

住民合意の課題

スマートシティを浸透させるためには、対象地域の情報を収集分析することが必要です。しかし、収集したいデータは個人的なものが多く、データ収集を行うための合意形成が重要となります。

スマートシティを高速で実現するためには、住民の協力が欠かせません。中でも利害関係のトラブルなどが発生しないように、慎重なコミュニケーションが求められます。

費用対効果の課題

スマートシティを進めるには利便性を追求するのではなく、新たなビジネスを生み出す必要があります。

なぜならスマートシティでは様々な技術導入の手間や費用がかかるため、費用対効果が生まれなければ計画が頓挫してしまうのです。

まずは計画段階でどのようなビジネスを作り出すことができ、どれくらいの利益を生み出せるのか慎重な検討が求められるでしょう。

プライバシーの課題

スマートシティに欠かせないデジタル技術の導入ですが、これは住民が情報提供を行うことが前提となります。例えば、カード決済の情報から移動ルートや購入商品などが分かるなど、ディストピア(監視社会)の側面が生まれてしまうことも考慮する必要があるでしょう。

スマートシティ化により、パーソナルな部分を侵害されると感じる住民もいます。そのため、どこまでスマートシティ化を行うべきか線引きが必要です。

まとめ

スマートシティ化を進行してデジタル技術やAI技術が導入できれば、住民および企業が活動しやすいまちづくりへとつながります。この取り組みは、すでに国内だけでなく海外でも進行しており、中には実用化が始まっている事例もあります。

日本が抱える少子高齢化や人口減少といった課題は今後も加速すると予想されるため、住民が健やかな生活を送れるようにスマートシティ化の実現が重要となるでしょう。今後さらなる発展を遂げていくと予想されることから、本記事の内容を参考、日本のスマートシティ化を見届けてみてはいかがでしょうか。

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